ブームと騒ぐマスコミの責任

ブームという言葉は大嫌いなのだけれども、マスコミが少しさわぎすぎる。その点は残念だと思う。ブームというものは愛好者が非常に多くなって、そして研究が進んだ―それなら良いが、ただそれが刀を買いたいと言う人間が多くなったというんじゃ刀剣社会の進歩じゃない。買いたいと言う人が多いというのは何かというと、買っておけば儲かる。そういうことです。石川県の美術館で刀が盗まれた。犯人は捕まったが、その動機は刀が高いからそれを盗んで額補の一部にしようという、という話だった。新聞などでみると、刀では一千万円以下というものはないと書いている。捨て値でも百万円くらいにはなるだろうと。これなどはマスコミの結果です。それによって人間一人がダメになるんだ、せっかく有能な青年が。これも聞いてみると、親は交通事故で両眼を失い、マサージ師をやっている。自分は小さいときに小児麻痺で脚が不自由になった。それで何とか医者になってそういう人の苦悩を少しでも救いたいんですが、二年も浪人している。これ以上親に迷惑をかけられない。何とかしてお金をつくろうとして、そのためにどろぼうをするという気持ちになった。刀を盗んだことは悪いに違いないが、それによってせっかくの青年一人が世間から葬られる。それが悲しい。